【2026年版】「待てば下がる」はもう古い?AI半導体枯渇とインフレ時代に個人投資家が知るべき構造変化

なぜ今、景色が変わったのか
「最近、パソコンやスマホの値段が全然下がらないな」
「ニュースでは景気の不透明さが報じられるのに、なぜ株価だけが最高値を更新し続けるのだろう?」
もしあなたが今、このような違和感を抱いているなら、その直感は非常に鋭いと言えます。実は今、私たちは過去数十年間の「常識」が通用しない、全く新しい投資環境の入り口に立っています。
2026年、市場を動かしているのは単なる好景気・不景気のサイクルではありません。
「AIによる物理的なリソースの枯渇」と「力(Power)による新しい国際秩序」という、2つの巨大な構造変化が同時に起きているのです。
この記事では、半導体業界の最前線で起きている「異常事態」と、世界的なマネーの流れの変化を点と線で繋ぎ合わせます。読み終える頃には、今のニュースが全く違った景色に見え、これから取るべき行動が明確に見えてくるはずです。
半導体市場で起きている「静かなるパニック」
まず、私たちのデジタル生活の基盤である「半導体(メモリ)」の世界で、今まさに起きている異変から紐解いていきましょう。
1. 「待てば安くなる」時代の終焉
これまで、家電製品やPCパーツには一つの不文律がありました。それは「発売から時間が経てば、価格は下がる」というものです。しかし、半導体市場のプロフェッショナルであるオムディアの安生健一朗氏は、この常識は「崩壊した」と指摘します。
なぜでしょうか?
それは、メモリ市場において「希少金属(レアメタル)並み」の争奪戦が始まっているからです。
これまでのメモリ市場は、需要と供給のサイクルで価格が上下していました。しかし現在は、AIという巨大な怪物が市場のルールを根本から書き換えてしまったのです。今後4〜5年は、PCやスマホなどの価格が高止まり、あるいは上昇し続ける可能性が高いと考えられます。
2. 真犯人は「HBM」への生産シフト
この価格上昇の最大の要因は、HBM(High Bandwidth Memory:広帯域メモリ)と呼ばれるAI専用の超高性能メモリです。
ChatGPTやGeminiなどの生成AIを動かすデータセンターでは、NVIDIAのGPUが大量に使われていますが、実はGPUだけではAIは動きません。その横に、データを高速でやり取りできる巨大な「作業机」=メモリが必要不可欠なのです。
ここで問題となるのが、メーカーの生産事情です。
世界シェアのほとんどを握る3社(Samsung、SK Hynix、Micron)は今、生産ラインをこぞって「汎用メモリ(普通のPCやスマホ用)」から「HBM(AI用)」へ振り向けています。
- なぜか?:HBMの方が圧倒的に高く売れ、利益率が高いからです。
- もしHBMが売れ残ったら?:汎用メモリに転用できるため、メーカーにとってHBMを作るリスクはほぼゼロです。
つまり、メモリメーカーにとって「HBMをやらない手はない」状況なのです。その結果、私たちが使うPCやスマホ向けの「普通のメモリ」が後回しにされ、供給不足に陥っています。これが、身近なデジタル機器の値上がりが止まらない「構造的な理由」です。
■主な証券会社の比較表
3. AI需要の爆発はまだ「序章」に過ぎない
「でも、AIブームが落ち着けば元に戻るのでは?」
そう考える方もいるかもしれません。しかし、データはもっと恐ろしい未来を示唆しています。
AIの処理(推論)に必要なメモリ量は、AIモデルの大きさに対して「2次関数的」に増大します。さらに、動画生成のような重い処理が増えるにつれ、必要とされるメモリ量は爆発的に跳ね上がります。
象徴的なのが、OpenAIの動きです。サム・アルトマン氏は韓国を訪れ、月産最大90万枚(300mmウェハー換算)規模の半導体供給について協議したとされています11。これは大手メーカーの生産能力の大部分を占めるほどの桁外れな量です。
AI開発企業は、将来的にメモリが足りなくなることを確信しており、今のうちに高値でも買い占めようと動いています。この流れは2026年で終わるものではなく、もっと先まで続く可能性が高いのです。
マクロ経済の視点「インフレと株高の正体」
半導体不足によるモノの値段の上昇。これは、より大きな経済のうねりの一部に過ぎません。ここからは、株式市場の専門家である朝倉慶氏の視点を借りて、世界経済の現状を分析します。
1. 世界同時株高の裏にある「持たざるリスク」
2026年の年明け、世界中の株式市場で最高値更新ラッシュが起きました。米国、ドイツ、イギリス、そして日本。
ここで重要なのは、多くの国で国民が「物価高で苦しい」と感じているにもかかわらず、株価だけが上がっているという事実です。
これは「不景気の株高」と呼ばれる現象ですが、本質は「通貨価値の希薄化(インフレ)」にあります。
モノの値段が上がり続ける世界では、現金の価値は相対的に目減りします。一方で、企業は価格転嫁(値上げ)によって売上を伸ばせるため、株価はインフレに合わせて上昇します。
つまり、今の株高は「景気が良いから」というよりも、「インフレに対する防御反応」として資金が株式に逃避している側面が強いのです。
2. 日本市場で起きた「17年半ぶりの逆転現象」
特に日本の投資家が注目すべき異常事態があります。それは、「長期金利(国債利回り)が、株式の予想配当利回りを上回った」というニュースです。
教科書通りの投資理論なら、「株(リスク資産)の利回りが、国債(安全資産)より低いなら、株を売って国債を買うべき」となります。
しかし、現実はどうでしょうか? この逆転現象が起きてもなお、日本株は上昇トレンドを維持しています。
これは、市場が「将来のインフレ加速」を織り込んでいるからです。
今の2%や3%の金利を受け取っても、それ以上に物価が上がってしまえば実質的には損をします。投資家たちは、目先の配当利回りよりも、インフレに合わせて価値が増大する「株式の値上がり益」を選んでいるのです。
3. 「力のルール」が支配する世界
さらに、地政学的なリスクもインフレを加速させています。
米国によるベネズエラへの強硬な対応や、グリーンランドへの関与に見られるように、国際法よりも「力(Force)」が優先される時代に入りました。
「ジャングルのルール」とも言えるこの状況下では、各国は自国の資源やサプライチェーンを囲い込みます。中国による対日強硬策(レアアース規制など)もその一環です。
こうした国際的な分断は、供給網の非効率化を招き、結果としてコストプッシュ型のインフレを長引かせます。
投資家が持つべき「思考フレームワーク」
ここまで見てきた「AIによるリソース枯渇」と「構造的なインフレ」を掛け合わせると、私たち個人投資家が取るべきスタンスが見えてきます。
❌ 避けるべき行動パターン
- 「もう少し待てば安くなる」と消費を先送りする:半導体製品を中心に、待つことでむしろ値上がりしたり、入手困難になるリスクが高まっています25。
- 現預金だけで資産を守ろうとする:インフレ率が金利を上回る状況では、銀行に預けているだけで資産の実質価値は目減りしていきます。
- 「配当利回り」だけで銘柄を選ぶ:金利上昇局面では、高配当株の魅力が相対的に薄れます。インフレに負けない「成長力(値上げ力)」を持つ企業かどうかが重要になります。
⭕️ 大事にすべき視点
- 「数字」より「構造」を見る:日々の株価のアップダウンに一喜一憂せず、「なぜメモリが足りないのか」「なぜ金利が上がっても株が下がらないのか」という背景にある構造を理解することが、握力を強めます。
- インフレを味方につける:インフレ時代には、「モノ」や「権利」を持っている企業が強さを発揮します。
■主な証券会社の比較表
今、注目すべきセクターと投資アイデア
以上の分析に基づき、中期目線(〜2026年以降)で注目すべきセクターを整理します。
※ここでの内容は具体的な銘柄の推奨ではなく、投資のアイデアとしての紹介です。
1. 半導体・サプライチェーン(日本企業の勝機)
NVIDIAなどのAIチップそのものに注目が集まりがちですが、日本の投資家が見るべきは、それを支える**「黒衣(くろご)」**たちです。
- 半導体製造装置・素材:HBMを作るためには、高度な製造装置と素材が必要です。日本のメーカーはこの分野で高い世界シェアを持っています。メモリメーカーがHBMに巨額投資をするということは、その資金が日本の装置・素材メーカーに流れてくることを意味します。
- 後工程・パッケージング:HBMはチップを積み重ねる高度な技術が必要です。この「パッケージング」技術に関連する企業も、構造的な需要増が見込めます。
2. 「枯渇」が生むチャンス(ニッチなメモリメーカー)
大手3社(Samsung、SK、Micron)がHBMに注力することで、汎用のDDR4やDDR5メモリがおろそかになっています。
ここでチャンスが巡ってくるのが、台湾や日本の「第3極」のメモリメーカーや、NAND(ストレージ)専業メーカーです。
巨人が去った後の市場で、需給逼迫の恩恵を受ける可能性があります。
3. インフレ・資源・防衛(「力の時代」の必需品)
「力のルール」が支配する世界では、以下のセクターが国策として買われる傾向にあります。
- 資源・商社株:インフレヘッジの王道です。資源価格の上昇が直接利益につながります。
- 防衛関連:地政学リスクの高まりを受け、各国の防衛費増額は長期トレンドです。日本では重工系などが該当します。
- 金融(銀行):金利のある世界が戻ってきたことで、利ざや改善による業績向上が期待されます。日本の銀行株は、インフレ時代の有力な投資先の一つです。
まとめ
2026年、私たちは「AIバブル」と「インフレ」という2つの波が重なり合う、歴史的な局面にいます。
PCの値段が下がらないことと、株価が上がること。
一見無関係に見えるこの2つは、「希少なリソース(半導体・エネルギー)の奪い合い」という根っこで繋がっています。
「すぐ買う」必要はない、でも「準備」は必須
この記事を読んで、「すぐに株を買わなきゃ!」と焦る必要はありません。相場は上下を繰り返すものです。しかし、「現金のまま持っていることのリスク」については、真剣に考える時期に来ています。
半導体市場のプロは「必要なものは、欲しい時に買うのが一番(待っても下がらないから)」と言います。
投資も同じかもしれません。「暴落したら始めよう」と待っている間に、インフレで資産価値が置いていかれるリスクがあります。
まだ証券口座を持っていない、あるいは休眠させている方は、まずは「いつでも動ける準備(口座開設・入金)」だけは済ませておいてはいかがでしょうか?
「投資は危険だ」と言われた時代から、「投資をしないことが危険だ」と言われる時代へ。
この構造変化に気づいたあなたなら、きっと賢い選択ができるはずです。




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