フィジカルAI × データセンター × 次世代ストレージ領域における「隠れテーマ株7選」

2025年最近になって急速に広がり始めた「フィジカルAI」。
これは、チャットGPTのような言語AIだけではなく、ロボットが“自分で考えて動く”世界へ本格的に踏み込む技術群です。
ヒューマノイドロボットの進化や、スキルドAIのような自律学習の驚異的な成長速度を見れば、この流れが一過性ではないことは明らかです。そしてこの波は、GPUや半導体だけではなく、液冷・電源・ストレージ・精密部品といった“裏側のインフラ”にも一気に押し寄せます。
そこで今回は、フィジカルAI × データセンター × 次世代ストレージという視点から、
まだ大きく評価されていない日本の中小型株7銘柄 を厳選しました。
すでに上りきった主役株ではなく、これから物語が立ち上がる可能性のある企業にフォーカスしています。
評価されていない有望銘柄 7選
1. 三桜工業(6584)
時価総額:約329億円 / PER:17.6倍 / PBR:0.69倍
🏢 事業内容
自動車用流体制御システム(ブレーキホース、燃料配管など)が主力の中堅部品メーカー。近年、データセンター向け液冷・水冷システムに本格参入。
🎯 テーマとの関連性
- データセンター液冷冷却:2024年11月に「ボールバルブ式水冷/液冷式熱マネジメント製品」を発表
- NTTコムやKDDIなど大手キャリアのデータセンター液冷化ニーズに対応
- 自動車部品で培った流体制御技術を応用、AI向けGPUサーバーの冷却効率を90%以上改善可能
💡 まだ評価されていない理由
- ニュース露出が限定的:発表は2024年11月だが、アナリストカバレッジが薄い
- 自動車不況の影響で株価低迷:本業(自動車部品)の業績悪化で株価が停滞(PBR 0.69倍は明らかな割安)
- 時価総額が小さい:329億円と機関投資家の注目を集めにくい規模
🚀 株価見直しシナリオ
- トリガー①:大手データセンター事業者からの大型受注発表(2025年Q2-Q3予想)
- トリガー②:液冷事業の売上比率拡大と営業利益率改善の開示
- トリガー③:アナリストレポートでの”隠れた液冷銘柄”としての再評価
2. シンフォニアテクノロジー(6507)
時価総額:約2,779億円 / PER:19.8倍 / PBR:3.28倍
🏢 事業内容
産業用インバータ、UPS(無停電電源装置)、半導体製造装置向け搬送システムが主力の重電メーカー。
🎯 テーマとの関連性
- データセンター電源インフラ:AI向け高出力UPSの需要急増に対応
- 半導体製造装置向けインターフェース機器:世界トップクラスのシェア
- パワーエレクトロニクス技術でデータセンター電力効率化に貢献
💡 まだ評価されていない理由
- 地味な事業内容:UPSや搬送装置は「縁の下の力持ち」で派手さがない
- 半導体関連としての認知度が低い:イビデンやメイコーの影に隠れがち
- 時価総額3000億円未満:大型株ほど注目されず、中小型株投資家の視野にも入りにくい微妙なサイズ
🚀 株価見直しシナリオ
- トリガー①:AI向けUPS大型受注の発表(Microsoft、Metaなど海外クラウド大手経由)
- トリガー②:半導体製造装置市場の回復本格化(2025年後半~)
- トリガー③:データセンターインフラ関連銘柄としての再カテゴライズ
3. 新光電気工業(6967) ※2025年6月上場廃止済み→除外
(富士通傘下のFC-BGA基板メーカーだったが、上場廃止のため対象外)
3. メイコー(6787)
時価総額:約2,379億円 / PER:約13倍(推定)/ PBR:約2.0倍
🏢 事業内容
車載基板で国内No.1、ビルドアップ基板(多層高密度基板)に強みを持つプリント基板大手。
🎯 テーマとの関連性
- ICパッケージ基板:2024年度からメモリーパッケージ基板の量産開始
- AI向けGPU、CXLメモリなど次世代半導体パッケージ基板の認定取得を加速中
- 過去5年で924億円の大型設備投資(ビルドアップ基板向け)が結実しつつある
💡 まだ評価されていない理由
- 車載基板メーカーとしてのイメージが強い:AI・半導体関連としての認知が薄い
- イビデンほど”AI銘柄”として喧伝されていない
- 中期的な投資回収フェーズ:先行投資が重く、短期的なPER評価は低め
🚀 株価見直しシナリオ
- トリガー①:メモリーPKG基板の量産拡大と利益率改善の実現(2025年度下期~)
- トリガー②:米国・欧州の大手半導体メーカーからの認定取得・受注発表
- トリガー③:”次のイビデン”としてのアナリスト評価見直し
4. THK(6481)
時価総額:約4,356億円 / PER:約28倍(高め)/ PBR:0.68倍
🏢 事業内容
世界シェア5割を誇るリニアガイド(直動案内機器)のグローバルリーダー。産業用ロボット、工作機械、半導体製造装置に不可欠な部品。
🎯 テーマとの関連性
- ヒューマノイドロボット:関節・駆動部にリニアガイドが多用される可能性
- 産業用ロボット:協働ロボット、次世代FAシステムで需要拡大
- 半導体製造装置の位置決め精度向上に貢献
💡 まだ評価されていない理由
- FA市場の底入れ待ち:工作機械・半導体装置市場の低迷で業績が停滞
- PERが高い割にPBRは割安という歪み:市場は成長性を疑問視
- 減速機ほどヒューマノイド銘柄として注目されていない
🚀 株価見直しシナリオ
- トリガー①:半導体製造装置市場の回復本格化(2025年Q3~)
- トリガー②:ヒューマノイドロボット向けアクチュエータ・リニアガイドの採用事例発表
- トリガー③:中国依存度低下とグローバル分散生産の進展
5. 日本精工(NSK / 6471)
時価総額:約4,480億円 / PER:28.1倍 / PBR:0.68倍 / 配当利回り:3.70%
🏢 事業内容
ベアリング(軸受け)国内最大手、世界シェア3位。自動車、工作機械、産業機械、航空宇宙まで幅広く展開。
🎯 テーマとの関連性
- ヒューマノイドロボット:関節部に高精度小型ベアリングが大量使用される(指1本に6個 × 5本指 = 30個/両手)
- データセンター:冷却ファン、サーバー内部の駆動部にベアリング需要
- EV・HEV:電動化でベアリング使用個数が増加(HEVはICE比+11%)
💡 まだ評価されていない理由
- 自動車不況の影響:主力の自動車向けベアリングが低迷
- PER28倍で割高感:業績の先行き不透明感から敬遠されがち
- ヒューマノイド銘柄としての認知が薄い:ミネベアミツミの陰に隠れる
🚀 株価見直しシナリオ
- トリガー①:ヒューマノイドロボット向けベアリング受注の具体化(Tesla Optimus、Figure AI等)
- トリガー②:自動車市場の回復とEV/HEVシフト加速
- トリガー③:配当利回り3.7%の高配当株としての見直し買い
6. ミネベアミツミ(6479) ※注意:時価総額大きめ
時価総額:約1.17兆円 / PER:約20倍 / PBR:1.47倍
🏢 事業内容
超精密ミニチュアベアリングで世界シェア60%、モーター・センサー・電子部品も手掛ける総合精密部品メーカー。
🎯 テーマとの関連性
- ヒューマノイドロボット:指関節用ミニチュアベアリング、アクチュエータ、センサーをワンストップ供給可能
- データセンター:冷却ファン用モーター、サーバー内部駆動部品
- ドローン・次世代モビリティ:軽量・高耐久ベアリングの需要拡大
💡 まだ評価されていない理由(部分的)
- 時価総額1兆円超で大型株:中小型株投資家の対象外
- コングロマリットディスカウント:多角化で評価が分散
- 昨年7月高値(3,799円)から乖離:短期的には調整局面
🚀 株価見直しシナリオ
- トリガー①:ヒューマノイドロボット事業の本格立ち上がり(2025~2026年)
- トリガー②:事業ポートフォリオの整理・選択と集中
- トリガー③:コングロマリットディスカウント解消の株主還元強化
※注:時価総額1兆円超のため、厳密には「中小型株」の範疇外ですが、ヒューマノイド関連として有力なため参考情報として記載。
7. カンネツ(非上場) → 除外
(非上場企業のため対象外)
あえて外した「すでに人気&高評価」の代表銘柄
イビデン(4062)
時価総額:約1.4兆円(推定)/ PER:40倍超(推定)
なぜ候補から外したか
- 株価がすでに急騰済み:2023年9月高値(9,285円)→ 2024年4月安値(2,956円)→ 2025年9月再度9,000円台と乱高下。直近1年で2倍以上に急騰
- エヌビディア向けGPU基板で有名:市場の注目度・織り込み度が極めて高い
- PER 40倍超の割高圏:AI関連プレミアムが既に過剰に評価されている
- アナリストレーティング「強気買い」多数:市場コンセンサスが既に強気に傾斜
コメント:イビデンは「AI × GPU基板」のド本命であり、すでに市場で十分に評価済み。今から参入するには株価水準が高すぎ、リスク・リターンが見合わない。
ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)
時価総額:約4,000億円 / PER:高水準
なぜ候補から外したか
- ロボット用減速機の代名詞:産業用ロボット向け精密減速機で世界的に有名
- ナブテスコと並ぶ”減速機デュオポリー”:市場シェア・認知度ともに最高水準
- 株価はすでにロボット関連として織り込み済み
- ナブテスコとの株式相互保有関係解消後も、市場の注目度は継続
コメント:ハーモニックは「ヒューマノイド × 減速機」のド本命。すでに投資家の間で広く認知されており、”隠れた銘柄”ではない。
まとめ:推奨戦略
短期(~6ヶ月)注目
- 三桜工業:液冷事業の受注発表待ち
- メイコー:メモリーPKG基板量産本格化
中期(6ヶ月~1年)注目
- シンフォニアテクノロジー:AI向けUPS・半導体装置市場の回復
- THK:FA市場底入れ+ヒューマノイド需要顕在化
長期(1年~)注目
- 日本精工:ヒューマノイド本格量産時代の到来
- ミネベアミツミ:ヒューマノイド+ドローン+次世代モビリティの複合的成長
投資上の注意点
- 時価総額が小さい銘柄(三桜工業など)は流動性リスクに注意
- PERが高い銘柄(THK、日本精工)は業績下振れリスクあり
- テーマ性の顕在化タイミングは不確実性が高い(2025年後半~2026年を想定)
- 分散投資を心がけ、1銘柄への集中投資は避けること
フィジカルAIは、単なるロボットの進化ではなく「産業構造の再設計」です。
ロボットが人間のようにタスクを理解し、動き、学習し続ける世界になれば、その裏側で使われる部品・電源・冷却・ストレージの市場は10倍規模に拡張していきます。
今回紹介した銘柄は、どれも地味で派手さはありません。
しかし、その“縁の下の技術”こそがフィジカルAI時代の真のコアとなり、再評価の余地は非常に大きいと感じています。
もちろん、テーマの顕在化タイミングにはばらつきがありますが、今からこうした銘柄をウォッチしておくことは、次の大相場の初動をつかむうえで大きなアドバンテージになります。フィジカルAIの進化を追いながら、引き続き関連企業の情報や決算動向をチェックし、長期的な成長ストーリーを見極めていきたいところです。
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